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19-6 Blood Dance

「ようこそ、ラストステージへ。待ちかねたぞ、勇者様」

笑う声に足が止まった。
周囲を囲む木々の音が辺りを包み、静寂を濃くしていく。
足を踏み入れた東京タワーの駐車場。
コンクリートで覆われた広い空間が闘技場に見えた。
正面に立つシルエットは仁王立ちのまま微動だにしない。
十数メートル離れた二人の位置からは、それがはっきりとは分からなかった。
だが。
その声、嗅覚を麻痺させる死臭を忘れるはずもない。
届いた手紙、仮定、予感。
全てが繋がって現実となる。
「……チャリオット」
美冬が低く呟いた。
咄嗟に隣を見上げた先にあったのは微かに細めてみせる真雪の瞳。
小さく頷くと前を見据えて手袋をきつく嵌め直した。
「なに寝ぼけた事、言ってんだよ」
顔の横で扇ぐように手を振りながら嘲笑の言葉を吐き出す。
もう一方の手は強く握り締められていた。
警戒が全身を覆う。
「ここはラストステージなんかじゃねえよ。まだラスボスが残ってんだろ、なあ?」
「俺の背後に誰かがいるとでも? 面白い冗談だ」
顎をわずかに上げ、顔を歪ませて笑ったチャリオットの視線が隣へと動いた。
目が合った美冬は構えるように身を硬くする。
わずかずつ後退していく右足。
「これは姫君、お目覚めになられたようで何よりだ。また会えて嬉しいよ」
おどけた仕草で両手を広げた。
半笑いの声が静寂を引き立たせ、耳鳴りを呼ぶ。
芝居がかった口調に嫌悪の表情を浮かべた。
「あたしもよ、チャリオット。だけど今日でお別れね」
「ほう?」
「あんたを殺しにきたの」
血で滑るショートソードを握り直して低く告げる。
足を移動させる度に砂利が小さく鳴いた。
そんな些細な音でも響く夜。
背後では墓標のように東京タワーがそびえている。
チャリオットは一瞬、動きを止めた後に身体を反らして笑った。
彼が動くと鋭い死臭が鼻腔を突く。
闇を裂く笑い声に、二人は表情を変える事はなかった。
「教えて欲しいんだけど」
真雪はやり取りを、正面を見据えたままで聞いていた。
視線は些細な変化も見逃すまいとせわしなく動く。
拳を握り締めると革の擦れる音が生じた。
「あんたは何に恋をしたの? 小鳥?」
その問いが相手を静止させる。
ややあって顔を大きく歪ませて笑みを浮かべた。
目に宿る狂気が嬉しそうな色を見せる。
喉を鳴らして笑う声。
「ああ、そうとも」
「小鳥って誰?」
「天使だ」
月のない夜にも影は生まれた。
言葉を交わすシルエットは距離を狭める事もせず。
保たれた均衡の中で、地面と同化したように固まったままだ。
「この世界に存在する、唯一の天使だよ」
闇に紛れて風に揺れる木々や建物の陰に隠れるイレギュラーの無数の目が囲む。
それは襲い掛かる機を窺っている訳ではなく、成り行きを見守ろうとしているのか。
辺りに漂う戦意は三人のものだけだった。
「天使って……」
「では、俺からも質問だ」
怪訝な表情を浮かべた美冬の問いに声を重ねるチャリオット。
彼の手が背中に回され、コートの中へと消える。
おそらくベルトに固定している大型ナイフを取ろうとしているのだろう。
真雪の眼光が鋭くなった。
「姫君、新しい世界はどうだ?」
「どういう意味よ」
「言葉どおりさ。エニグマのヨイとして見る世界の感想を聞いているんだ」
「……何言ってるか分からないんだけど」
苛立ちを隠して平静を装う声が答える。
表情に浮かぶのは不快感。
苛立ちを示した靴底が等間隔にリズムを打っていた。
チャリオットは、詠唱を開始する真雪を一瞥すると目を細める。
再び、視線が美冬に戻された。
「しらを切るな。そんなに俺と同じ生き物である事を認めたくないのか」
「あんたと一緒にしないでよ」
「何が違う? 俺達は同属だ」
笑みを含んだ声が反応を楽しむように言い聞かせる口調で言う。
ゆっくりと何かを握った腕が下ろされていく。
離れた位置から聞こえた微かな金属音に、美冬は唇を噛んだまま後退させた足に力を入れた。
苛立ちが体の内側で熱を帯びる。
「同じだよ。死臭を撒き、食い尽くし、死の中でしか生きられぬ亡者よ!」
「違う! 一緒にするな!」
笑う言葉に怒声をぶつけた。
握り締めた拳が震える。
次第に張り詰めていく空気が鋭さを増していく。
強く睨むもチャリオットは口の端を大きく歪ませるだけで。
「美冬、冷静になれ! 飲み込まれる!」
「あたしは違う! あんたとは違う!」
隣で制する真雪の声は耳に届いてないらしい。
美冬は同じ言葉を繰り返しながら首を横に大きく振った。
その度に髪が暗闇の中で鮮やかな色の残像を残しながら揺れる。
瞳に怒気がはらむ。
呼吸を沈めようとつばを飲み込む動作。
チャリオットは真っ直ぐに向けられる怒りの感情を楽しんでいた。
肩を揺らしながら笑いを堪え、美冬を観察する。
だが、その赤い瞳には飢えた色が浮かぶ。
目を見開いて口の端を大きく上げた。
開く唇、言葉を紡ぐ。

「どこがだ? そう思っているのはお前だけだぞ」

その言葉が放たれると同時に影が走った。
風が唸る音の後に見えた、銀色のライン。
「エンゲージ!」
怒鳴る声が宣誓をする。
「敵一体、チャリオット! 討伐を開始する!」
その声にインカムが答えたが、美冬の耳には届かなかった。
大きく横に薙ぎ、その反動を使って一閃。
空いた左手を振り上げるが。
チャリオットは薄笑いを浮かべたままで攻撃をナイフで受け止めていく。
空を切る音と鋭い金属音。
それに乱れた足音が重なり、辺りの静寂が失われていった。
「相変わらず突っ込むばかりで直線的な動きしか出来ないようだな。太刀筋が読みやすすぎる」
片眉を上げながら嘲笑うように言う。
覗き込もうとする顔を狙うが身体をそらして避けられた。

遊ばれている、と美冬が奥歯を噛み締める。
チャリオットの言うとおり攻撃が読まれているのだろう。
怒り任せに突っ込み、勢いだけで倒せる相手ではない。
頭で考えようとするが、気持ちが焦るばかりだった。
退く事も止まる事も相手にチャンスを与えるだけだ。
だからと言って、このまま攻撃を続ける事が有効とは思えない。

「もっと頑張りましょう」
その声が現実に戻す。
視界の端、チャリオットの体の影からきらめくナイフが見えた。
迫る切っ先に舌打ちする。
背後で聞こえる風の生じる音は真雪のスキルだろうか。
美冬は咄嗟にショートソードを顔の前に構えて防御の体勢をとるが。
「ぐ……っ!」
真正面からぶつかってくる攻撃の強さに堪えきれず、数歩よろめいた。
バランスを崩しかけながら後ろへ跳ねる。
地面についた手の甲には赤い線が走り、血が浮かんでいた。
「美冬、動くなよ!」
その声と共に放たれる青白い光を放つ球状の物体。
しゃがみ込む姿勢で止まった美冬の真横を風を伴うスキルが通り過ぎる。
数メートル先で土ぼこりが舞い、爆音が響いた。
霞む周囲に目を凝らすと見えたのは――
「避けて!」
叫ぶが早いか。
上空に跳ねた黒い影は真雪を狙う。
突き立てようとするナイフの光を見て舌打ちが漏れた。
手に意識を集中してスキルを出そうとするが、このタイミングでは間に合いそうもない。
隣で腰を落としながら上を睨む美冬を一瞥する真雪。
この距離では彼女を巻き込む可能性が高いと心の中で呟いた。
どうするべきかと悩む時間はない。
光を宿した右手を顔の前に突き出そうとした、その時。

激しく金属がぶつかる音。
苦しげに漏れる声。
間近に迫る鋭い銀色の光。

「くっ!」
美冬は振り下ろされるチャリオットのナイフを受け止めていた。
水平に構えたショートソードがこめられる力に小刻みに震える。
耐えようとしながらも美冬の腕が次第に下がりつつあるのが見えた。
食い止める刀身に、もう一方のショートソードを添えて押し返そうとする。
「懐かしい光景だ。以前もこんな風になったな、あの葬儀の場で」
額を付き合わせたチャリオットが肩を揺らして笑う。
その間も、防ごうとするショートソードごと切り落とそうとしていた。
歯を食いしばりながら膝が落ちかけるのを堪える美冬に視線を向けた後、
真雪を見てゆっくりと笑う。

脳裏に浮かぶのは葬儀での一場面。
チャリオットが生き返った、あの日も同じように対峙した事を思い出した。
攻撃を食い止める美冬、笑う死人。
死臭を帯びた空気も同じだ。
だが、以前と違う事があるとすれば――真雪は心の中で考える。

「再び問おう、死神」
温度を感じない、湿気の多く含んだ重い空気が肌にまとわりついた。
息をするのもためらう。
全てが止まる景色。
「お前は、この女が斬られるのを黙って見ているだけか?」
美冬が呻くように何かを言うが耳に届かず、ただ正面の笑む顔を見据えた。
「お前は殺せるか? 息をし、人の形を成す物を」
刀身の震えが大きくなり、苦しげな声が漏れた。
攻撃を食い止めている美冬の力も限界が近付いているのだろう。
もうすぐ均衡が崩れる。
「ああ」
真雪は美冬の背後から腕を伸ばし、チャリオットの額の前に手をかざした。
冷たさすら感じる、無感情な声。
今まで楽しげだったチャリオットの顔から笑みが消える。
まるで何かに気付いたように。
「殺せるよ。人だろうが何だろうが、やってやろうじゃねえか」
静かに放たれる言葉。
「……そういう覚悟がなきゃ、自分の居場所なんて守れねえって気付いた」
睨んでいた瞳が細められる。
冷たいチャリオットの肌に指先が触れた。
「だけどな、あんたは人じゃない」
インカムから聞こえるやり取りが、耳からすり抜けていく。
周囲が何かを予感するようにざわめき始めた。
揺れる木々の音が幾重にも広がる。

「『エトセトラ』だ」

刹那の静寂。
膠着は解け、一気に動き出した。
視界で光が膨らむと同時に、チャリオットが後ろへ飛び退こうと重心を落とす。
力の均衡が崩れた拍子にバランスを崩した美冬の腕を掴む、背後から伸ばされた手。
「踊れよ!」
自らの手から生じる音にかき消されながら真雪が怒鳴った。
放たれるスキルが風をまとい、駆け抜けていく。
青白い光の向こうに見えたのはモスグリーンのコートが跳ねた姿。
重い物がぶつかった衝撃音が耳鳴りを誘った。
尾を引く残響を重なって、何かが引きずられる音を聞く。
周囲に広がった、砂の混じる埃が視界を遮った。
不明瞭な中に見えるシルエットは倒れていない。
数メートル先のチャリオットは顔を腕でかばいながら防御をしているように見えた。
漏れる舌打ち。
『こちらノクティルカ、ギルド発表のチャリオットのステータスをお知らせします。
クラスB+、物理・スキル共に有効』
無感情な声が耳元で聞こえる。
ただ、その声は張り詰めた色を漂わせていた。
前を見据えたままで武器を握り直す。
『弱点は不明、ただし持久戦に弱いのではないかとの報告があり……』
「時間稼げって!? ふざけないでよ!」
冷静な声を怒声が遮った。
手元に光を宿す真雪を一瞥した美冬が地面を蹴り、距離を詰める。
影が駆けた。
『これは私闘ではありません! 確実に獲る方法を選ぶべきです!』
「聞こえない!」
強い口調が飛び交い、美冬の表情に苛立ちが浮かぶ。
正面に立つチャリオットまで数メートル。
右手を後ろへ引き、大きく天上へ向かって斬り上げた。
微量の赤い飛沫が虚空を舞う。
間髪いれずに空いたショートソードが彼の胸元を突き刺そうとするが。
踊る靴音が紙一重で避けていく。
「冷静になれ、姫君。頭に血が上った状態で攻撃は当たらないぞ」
刀身にナイフを押し付け、力任せに払いながら言うチャリオット。
片眉を上げ、自分を睨む顔を眺めた。
「戦闘に必要なもの。状況を見極める判断力、冷静さ」
ぶつかり、火花を散らす鋭い金属音。
「そして1%の幸運」
薙ぐ軌道を美冬がしゃがんで避けた。
チャリオットの表情に、まるで獲物を捕らえたかのような笑みが浮かぶ。
ナイフを持ち替えて地面に切っ先を向け。
勢いよく振り下ろされる先にあるのは美冬の足だった。
「さあ、喘げ」
我に返った反応。
美冬は咄嗟に足をずらすが膝に鋭い痛みが走る。
一瞬顔が歪み、肩が大きく揺れた。
チャリオットが地面にナイフを突き立てる格好で美冬を一瞥するが、そこにあったのは。
口の端を上げて不敵な笑みを浮かべる顔だった。

「喘ぐのはあんたよ」

その言葉に息を飲む。
激しく揺れる木々の一切の音が消え失せ、景色がスローモーションで流れた。
美冬の肩越しに見えた、眼前に迫る球状の光。
闇に紛れて手を伸ばす真雪の姿、唇が動いているのが見える。
チャリオットは舌打ちと共にサイドへ避けようと、突いた手で地面を押し返した。
だが、黒い影は光に押されるようにして後方へと吹き飛ぶ。
轟く爆音が地響きを呼び。
駐車場を囲む生垣のある地点が激しく揺れた。
「ヒット!」
遠くから短く漏れる声を聞きながら美冬が告げる。
痛みを気にする様子もなく、静止したままで前方を睨み続けた。
幾重に余韻を残しながら静まり返っていく周囲。
放たれたスキルが空気をかき回し、強い死臭が波のように感覚を襲う。
数秒が経過しても動くものはいなかった。
美冬は息を殺してチャリオットが消えた付近を凝視する。
時折警戒した視線が辺りを見渡し、些細な変化を聞き取ろうと耳を澄ませた。

「大丈夫かよ」
靴音が近付いた事に気付き、顔を上げると。
真雪がため息混じりで手を差し伸べる姿がある。
翡翠色の瞳が手と顔を交互に見比べた後、小さく笑って手を掴んで立ち上がった。
だが、すぐに笑みの消える横顔。
「うん、そんなに深くないし。かすり傷って所かな」
「この痛みのどこがだっつーの。ったく、無茶するなよ」
呆れた声と共に視線が膝を見る。
黒いニーハイソックスで怪我の程度は分からないが
真雪に伝わる感覚は彼女の言葉通りとは思えなかった。
脈打つ痛みに口を開きかけて、何度目かの深い息をつく。
「それにチャリオットの前に立ってんのに『撃て』っつーのやめろ。
お前まで巻き込んだらどうするんだ。危ねえだろうが」
「肉を切らせて骨を断つってね。いやー、エニグマって便利だわ」
「聞けよ、人の話」
地面に落ちた外灯の明かりが木々の揺れる様子に合わせて、不安定に揺らめいていた。
幻聴のように聞こえた何者かの叫び声はイレギュラーと交戦している音なのだろうか。
チャリオットはスキルに巻き込まれたまま、沈黙を保っていた。
凝視しても何も見えず、静かな空気に不気味さを覚える。
「チャリオットは、うちらが近付くのを待ってるのかな」
「不意打ち狙いってか? どっちにしろ、用心に越した事はねえ」
小声で会話を交わしながら視線を合わせた。
真雪が手袋をきつく嵌め、何かを思案しているように虚空を睨む。
「確かにヤツは持久戦に弱いんじゃねえかと思う。
だからって、そこを突くのは俺たちにとっても不利だ。どう転ぶか分からないからな」
「うん」
「そうなると、やっぱり……」
言いかけた言葉を飲み込む、葉ずれの音。
二人は同時に前方を見た。
漆黒の木を掴む手、その後低い笑い声が姿を表す。
俯き加減のチャリオットの口元が笑みを浮かべているのが離れた位置からでも分かった。
額から流れる鮮血に片目をつむる。
それが等間隔にしたたり、地面に点を生んだ。
全身に緊張が走る。

「なるほど。確かに言葉通り迷いがない」
重い靴音が歩み寄り、再び二人と対峙した。
肩を揺らしながら楽しげな姿とは裏腹に、飢えた赤い瞳に浮かぶのは狂気と怒り。
ナイフを大きく振ると手中で回して握り直す。
「それで良いのだ、エニグマ。それでこそ死神だ!」
声を上げて笑う様に美冬が嫌悪感を滲ませる。
唇を曲げて眉間に深くしわを刻んでいた。
「口で何と言おうと結局は同じという事だよ。
『お前とは違う』と人は言うが、結局自分の本性から逃れられない」
顎をわずかに上げ、ナイフを睨みつける視線に向ける。
「泳ぐ為に生まれた魚は泳ぐ事しか出来ない。空を飛びたいと願っても叶わぬ夢だ」
背後の塔は無言で耳を傾けているかのように見えた。
それだけではなく、景色全てが。
「お前達にも言える」
吠える声にも似た音を立てて風が通り過ぎる。
無意識のうちに拳を握り締めていた。
攻撃をする事は出来るかもしれない。
だが、二人はただ睨むだけで動こうもしなかった。
「戦う為に生まれた者は戦う事しか出来ない。死神は死神だよ」
挑発する声。
片目を細めて、喉を鳴らして笑うチャリオットを美冬は黙って見つめる。
怒りの混じるため息を吐いた。

「……言ったじゃねえか」
俯いた真雪の言葉に視線が集中する。
髪が顔を隠し、表情を窺い知ることはできなかった。
だが。
「お前、前に言ったよな。誰も彼も彼岸に連れていくなって。
死神として生きても、チェイサーとしての死神になるなって」
震えるほどに握り締められた拳。
チャリオットは食い入るように真雪を見つめる。
「それが何だよ。お前が死神になってんじゃねえか。
お前がどいつもこいつも彼岸に連れてってんじゃねえかよ!」
顔を上げ、睨みながら怒鳴った。
周囲に響く声が空気の色を変えていく。
闇の中で金色の瞳を見た錯覚を覚え、美冬がわずかに息を飲んだ。
「俺が死神だ? 戦う為に生まれた? ふざけんじゃねえよ、お前がそうしたんだろ!」
真雪の手は光をまとい、耳鳴りに似た音が次第に大きくなっていく。
「こうせざるを得なくしたのも、俺達を死神にしたのも全部お前じゃねえかよ!」
「真雪、ダメ! 抑え……」
「これがお前の望んだ事か!? 全部ぶっ壊して、全部捨てて!
そこまでして欲しいモンって何だよ!」
纏う空気が不安定になった事に気付いた美冬が制そうとするが荒げた声にかき消された。
胸に渦巻く感情に痛みを覚えて押し黙る。
張り詰めた空気が肌を刺した。

「答えろ、チャリオット!」

響く怒声。
それを向けられたチャリオットは目を細めて真雪に視線を投げる。
その顔には何の感情もなく。
ただ、殺気だけが存在していた。

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